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「獣医は不足している」定性的考察
就職氷河期のとき公務員の人気は高まった。
加戸前愛媛県知事が獣医師不足を感じたのは口蹄疫、BSEや鳥インフルエンザの愛媛県上陸への懸念からだ。
口蹄疫は2000年、BSEは2001年、鳥インフルエンザは2004,2005年に日本に発生した。
これらの疫病への懸念が2007年に今治市と愛媛県をして構造改革特区による獣医学部新設提案せしめたのだろう。
さて、文頭に就職氷河期には公務員の人気が高まると書いた。
獣医師が不足していないとするならば、就職氷河期には公務員獣医師になろうとする人が増えるはずだ。だが、鳥インフルの2005年の時点では不足したままだった。ちなみに、最初の就職氷河期は1993年から2005年まで続いた。
ということは、就職氷河期でもペットの獣医師需要が強かった、言い換えるなら、ペットの獣医師も不足したままだということだ。
頭の出来が違うといわれればそれまでだが、氷河期で凍死せずとも凍傷を負ったものからすると。
最近の底辺弁護士さんのご意見も合わせてお伺いしたいところだ。
獣医師は何人かと調べてみると2014年(平成26年)に39098人という数値が六辻彰二氏の記事(*1)に見つかった。
また、小川榮太郎氏の『森友・加計事件」朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(2017 Hanada双書 飛鳥新社)のp232には、平成26年現在約34500人の獣医師がいて、ペット関連44%で大都市では過剰気味、産業動物獣医師は22%。大学等研究機関8%。偏在は拡大中(獣医師法第22条の屈出状況に基づく京産大資料より)。六辻氏のデータとの差は4500人。10%以上の差がある。
六辻氏のデータを使うなら、獣医師はざっと4万人。獣医学部の定員は930人だが、水増しで1200人。いつから1200人なったか不明だから、年ざっと1000人が大学を卒業して獣医師になるとしよう。すると、40年分の獣医師がいることになる。獣医学部の倍率は十数倍。浪人も多いだろう。19才で入学卒業25才。40年後には65才。つまり、転職者が出ていない美味い仕事なのだ。
<余談>
六辻氏のデータは時系列がある。2006年は30853人が2012年に39283人となり、年1400人増えている。1400人は獣医学部の水増し後の年あたりの入学者数と符合するが多すぎる。それに、獣医師とて不死身では無いはずだ。
ところが、2014年は39098で800人しか増えて居ない。獣医師界でも去って行く老人が増えた事を意味するのかもしれない。
(*1 Yahoo!ニュース JAPAN https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20170726-00073754/ 元々は世界動物保健機構(World Organization for Animal Health)
記事を書いた人は国際政治学者の六辻彰二という人。杜撰で穴も目立つ分析手法からみると大した学者では無い。
例えば「2年ごとに数値が同じ個所が目立つのは、日本獣医師会が隔年で世界獣医師会に報告しているためとみられる」とある。
実は、獣医師法第22条では2年毎の届け出を定めている。獣医師法第22条が同じ数値になる真因である。調査が甘い。
獣医師数のランキングで日本は8位だから、「つまり、単純な人数でいえば、日本の獣医師は必ずしも少なくないといえます」と書いている。7位はウクライナで54169人で日本の約1.4倍。ウクライナの人口は4500万人で日本は約2.7倍の人口を持っている。だから、人口比なら、3.8倍となる。印象操作だ。
また、氏は家禽を計算に入れていない。
ペットと家畜は相当違うそうだ。必要とするスキルも違うらしい。六辻氏の議論は、同じ「ドクター」という語がつくから医師と文学博士を一緒くたにして数字を弄んでいるに等しい。)
(六辻氏からの引用中の太字は六辻氏による。)