杉田水脈氏は何故「生産性」という語を使ったのか LGBT 

杉田水脈議員の『「LGBT」支援の度が過ぎる』(新潮45(2018/8号))という文には「「生産性」」という語があり、問題とされている。

 

「「生産性」」の前後を含めて引用すると

「行政が動くということは税金を使うということです。

 例えば、子育て支援や子供ができないカップルへの不妊治療に税金を使うというのであれば、少子化対策のためにお金を使うという大義名分があります。しかし、LGBTカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです。そこに税金を投入することが果たしていいのかどうか。」

 

文中の「つまり」は、「生産性」と「子供を作る」が同値であることを示している。しかも、杉田氏はわざわざ生産性という語を「」で括り、ここでは、生産性をちょっと違う意味で使ってますよと強調しているのだ。

 

だが、メディアの切り取りは酷い。例えば、朝日新聞高橋純子は(LGBTカップルは)「生産性がない」と切り取った。

「当事者として「新潮45」問題と向き合う」と紹介されている松岡宗嗣も「(LGBTは)生産性がない」と切り取った(gendai.ismedia.jp/articles/-/57649)。

正確に報道しようとしているメディアでも、

「彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです」

と引用する。

更に正確を期すメディアでも

LGBTカップルのために税金を使うことに賛同が得られるものでしょうか。彼ら彼女らは子供を作らない、つまり「生産性」がないのです」

止まりの引用しかしない。

原文にある

「例えば、子育て支援や子供ができないカップルへの不妊治療に税金を使うというのであれば、少子化対策のためにお金を使うという大義名分があります。」

の部分、特に「大義名分」はカットされてしまう。

 

杉田氏は「T(トランスジェンダー)は「性同一性障害」という障害なので、これは分けて考えるべきです。」と書いている。これにより文中の「子育て支援」や「子供ができないカップル」とは健康で働いていて生活保護の対象にならない程度の稼ぎがある人、もしくはカップルだと分かる。

だから、NHKなどが誤解した(させた?)障害者の発言を紹介したり、やまゆり園事件の植松被告を例に出すのは不当である。NHKは公共放送であるから、誤読誤解を直すのが仕事だ。

 

Tについても性転換手術前後のTも、健康で働いていて生活保護の対象にならない程度の稼ぎがある人、もしくは、カップルに含まれる。確かに、性転換手術前後のTもホルモン剤投与などにより不調になる人もいるが、純女でも生理痛が酷い人はいる。

 

健康で働いていて生活保護の対象にならない程度の稼ぎがある人、または、その人の庇護下にある子供にお金を出すには大義名分がいる。小渕恵三首相(当時)は条件を満たす人に2万円をばら撒いた。受け取る資格のある人の中には、15歳以下の子供がいる世帯主も含まれた。このばら撒きの「表向きの真の」の理由は人気取りだ。だが、「真の真の」理由は公明党のご機嫌とり。

このばら撒きには「地域振興券」と名前と大義名分がつけられた。

 

今、教育無償化の議論が行われている。その論拠の一つに行政が負担する学資以上の見返りが税収として期待できるというものがある。この論に従うなら、教育無償化は投資なのだ。

 

健康で働いていて生活保護の対象にならない程度の稼ぎがある人々の一部を支援するとしたら、それは、投資でなければならないように思える。投資なら、トータルとして、投資額以上のリターンがなければならない。とすれば投資を受ける一部の人の生産性の有無が問題となる。(投資にはリスクがつきものだ。不妊治療が失敗してもそれは織り込み済み。閉経した女性に不妊治療と称して税金を使うのは問題だと考えるが。)

 

更に付け加えるなら、行政は言葉を飾る。通称「淫行条例」の一般的な正式名称は青少年保護育成条例だ。杉田氏は地方公務員も経験している。

 

これが杉田氏が大義名分という語を提示した後に、わざわざ「」で括った生産性を使った理由なのだろう。

 

(文中敬称一部略)