アメリカの魔女狩りは中世?
中世とはヨーロッパ史の概念です。中世の花形、騎士への憧れを揶揄した『ドン キホーテ』は1605年に出版されました。著者はミゲル デ セルバンテスでスペインの人。スペインは他の国からその後進性を笑われていました。
週刊文春(2019/02/07 p50)にある『今週のことば』に次があります。
「米史上最大の魔女狩りだ」(側近が偽証罪などで起訴された)「トランプ大統領(72)がロシア疑惑に言及。現在は”忠誠”ではない。」
『今週のことば』は駄洒落で有名人の言葉を皮肉るコラムです。記者は「魔女狩り」につられ”忠誠”すなわち「中世」を持ち出したのでしょう。ここで記者の教養の不足とワンパターンが露わになってます。
アメリカの建国は1776年です。従ってアメリカ合衆国に中世はありません。遡っても、メイフラワー号のアメリカ到着は1620年ですから、現在のアメリカ合衆国の版図に中世はありません。
ところが、最新の魔女狩り(の一つ)はアメリカのセーラム(Salem そう、タバコのセーラムの由来の地と同じ綴りですが、場所は異なります)で1692年に始まりました。
記者が世の中に目を配っていればタバコのセーラムに気がつきます。そして、教養があれば、セーラムの魔女狩りと連想が確立され忘れなくなります。
実は、魔女狩りは、始まりこそ中世の15世紀ですが「初期近代の16世紀後半から17世紀にかけて魔女熱狂とも大迫害時代とも呼ばれる魔女裁判の最盛期が到来した」(Wikipedia「魔女狩り」)のです。ですから、記者の「魔女=中世」という図式は誤りです。
記者はロシア疑惑目を留めています。側近は偽証罪などで起訴されていますが、肝心の「ロシア疑惑」の存在は一向に証明されていません。存在しない魔女を追求する魔女狩りと、おそらく存在しない「ロシア疑惑」の追求には類似性があります。魔女狩りでは拷問を用いて自白を強要しました。「ロシア疑惑」では偽証罪が用いられています。ここにも、「ロシア疑惑」と魔女狩りには類似性があります。
これらの類似性に思いを致せば、トランプ大統領の「米史上最大の魔女狩りだ」の味わいは深まります。
マッカーシーの赤狩りも魔女狩りと言われました。ヴェノナ文書により、魔女狩りとは言い切れないことが(ハリウッド以外では)明らかになっています。ですから、トランプ大統領の「米史上最大の魔女狩りだ」は正しいと言えるでしょう。
ところで、スティーブン キングは著名な作家で、その小説は何本も映画化されました。アカデミー賞を取ったものもあります。
初期の作品に『呪われた町』(集英社 1983)があります。これは映像化され、日本では『死霊伝説』というタイトルで映画として公開されました。この小説の原題は”Salem’s Lot”です。
記者は忙しいのか、それとも、幼いのか。