米中貿易戦争の見誤り
「新聞を読むとばかになる」が広まって久しい。この実例が週刊文春2019/05/23にあった。
同号のコラム『新聞不信』のタイトルは『今こそ高邁な論説を展開すべきだ』。これは米中貿易摩擦を扱っている。
だが、そもそも、米中対立を貿易摩擦と矮小化している時点で「高邁」ではない。
トランプ大統領が支那からの関税の税率引き上げて、更にこれを全輸入品目に適用する動きを見せた。コラムの翼氏は次の認識を示す。
<これに対して、中国もそれに見合うだけの報復関税をかけるはずだ。>
翼氏は「それに見合うだけ」と言う。また、アメリカは支那から33兆円輸入しているとも書いている。
そこから、支那も33兆円に「見合うだけ」の輸入をアメリカからしていると、翼氏が認識していることが導出される。
ところで、米中関税戦争が何故起きたかを思い出してみよう。アメリカは対中貿易赤字に、つまり、支那がアメリカ製品を買ってくれないことに因縁をつけたことから始まった。
支那が<それに見合うだけの報復関税をかけ>られるとしたら、そもそも米中関税戦争は起きていないのだ。
高橋洋一教授は
・アメリカの物価は安定的
・支那の物価は上昇
と指摘し、次のように分析している。
・支那からの輸入は代替可能
・よって支那の業者は輸出価格を下げている。(私見だが、下請け泣かせ、労働者搾取もしているのだろう。)
・それに反してアメリカからの輸入は代替が難しい。飼料価格が上がると豚肉価格を上昇する。
・元安誘導
アメリカの物価はさほど上昇していない。関税戦争の痛みは支那の側に効いている。アメリカには継戦能力がある。
翼氏は
<国際的にみれば、米中の貿易摩擦は大人げないゲーム>
としか認識していない。
更に翼氏は
<貿易・外交摩擦から、軍事行動へと拡大する方向性に歯止めをかける。今こそ、そうした高邁な政治理論を解くべき時期ではないのか。>
かかる高邁な理論があり、それを日本の新聞社が考え出せるとしよう。米中がそんなものを気にかけると翼氏は考えているのか。
「人類皆兄弟」なる<高邁な理論>では米中は納得しないと思うぞ>翼氏
呆れたことに翼氏は
<新聞社に真の警世の徒は育っていないのだろうか。>
と新聞社の人材育成システムを過大評価する文で締めている。
本当に新聞をよく読む翼氏は「新聞を読むとばかになる」の実例だ。