経済記者の書評にみる経済無知 高井浩章 『イスラム教の論理』(飯山陽 2018 新潮社)

高井浩章経済記者が『イスラム教の論理』(飯山陽 2018 新潮社)の書評を「本が好き。」に掲載した(https://honsuki.jp/review/19522.html)

 

彼は

<近代的な国民国家や西欧的価値観と「イスラム教の論理」が本質的には相いれないものだという認識を持っておくのは、安易な多文化主義で問題を単純化してしまうよりも知的に誠実な態度と言えるだろう。>

と正しい指摘をしている。なのに

<ある程度の予備知識がない状態の読者が入門書として読むのは、正直、お薦めできない。>

と書いてしまっている。その理由は

<イスラム教とムスリムに対して、必要以上に恐怖心や警戒感を持たせる劇薬という側面があると考えるからだ。>

 

私は、飯山さんは、初心者にも過不足無くイスラム教の諸側面を紹介していると判断した。飯山さんは「真のイスラム教徒」とそうではないイスラム教徒を対比して紹介しているからだ。

 

本稿のタイトルに「経済無知」を入れるきっかけは次。

 

まず高井経済記者は

<本書では「世界18億人」とイスラム人口の巨大さが繰り返し強調される>

と指摘し、次を主張する。

<「真のイスラム教徒」と呼べる人間は1000人に1人も居ないだろう。>

 

高井経済記者は経済記者なのに

18億人÷1000

を計算していない。答えは180万人。テロ実行犯の母集団としてお釣りが積もり積もって富士山になってしまう大きさだ。ここにイスラム教における個人の義務(礼拝しなさい、喜捨しなさい等)と集団の義務(カリフを置きなさい、全員がジハードに加わらなくとも良いが集団から誰かを出しなさい、集団から金を出すなどしてジハード支援をしなさい等)を考え合わせれば尚更だ。

 

悪いことに、「真のイスラム教徒」でないがテロを支援する人はその何倍もいる。イラン、サウディとサウディの金持ちや王族、ムスリム同胞団など、テロ支援国家、テロ支援団体、テロ支援個人もある。テロリスト養成保育園すらある。

 

18億人÷1000の計算すらしない高井浩章経済記者が書いた経済記事に価値があるのだろうか。