『そこまで言って委員会』の反死刑派森達也らの嘘
『そこまで言って委員会』2017/11/05のテーマは死刑。死刑廃止に賛成と反対に別れ、議論が行われた。
興味深い論点として
死刑になりたいから多数の殺人を犯す人がいる。だから、そういう人を出さないため死刑を廃止すべき
があった。これについては後述する。
森達也映画監督は死刑になりたいから多数の殺人を犯す人と自殺者を結びつけ、
「この国は、あの、自殺する人の数がもう3万人近くいます」
と言った。ご丁寧にも
「年間約3万人の自殺者とも関連?
日本の命のハードルが下がっている?」
とテロップを付けた。
森監督は、
自殺したい人は複数の殺人を犯して死刑執行されようとするだろう
と言う仮説を提示し
「死刑になりたいと言う人を処刑するということはね、まあ、そもそも論理矛盾ですよね」
と言った。
だが、そういう人は、死刑がなければ、殺人を犯さないのだろうか?
また、一つの例を全体に拡張する誤りを犯している。
データ面をチェックすると自殺者数は
「平成28年中における自殺者数の総数は、21,897人で、前年に比べ2,182人(8.9%)減少した。」(警察庁 https://www.npa.go.jp/news/release/2017/20170321001.html9
だ。森監督は5割もサバを読んでいる。
坂本敏夫元刑務官は
「平成27年度の仮釈放、3人か4人なんですよ」
と言ったが、
正しくは11人(内2名は「仮釈放取消し後,再度仮釈放を許された者」)
(http://www.moj.go.jp/content/001208315.pdf)。
因みに、27年に新規に無期刑に処せられたのは25人。上記URLを見ると平成22年から10人前後が仮釈放されている。
また坂本元刑務官は
「裁判員裁判が始まってから死刑も無期も増えました。激増しました。」
とも発言したが表を見るとこれも誤り。裁判員裁判は平成21年5月に始まった。
辛坊治郎氏の、懲役付きの終身刑にすれば良いのでは?という問い、竹田恒泰氏の「終身懲役を作ろうと思えばそれは作れますよ」に対する坂本元刑務官の受け答えを見ると、この人頭が凝り固まっていて、また、先のデータの誤りもあって、大丈夫かと感じてしまった。坂本元刑務官の主張は、無期懲役刑が実質的に終身懲役刑だということなのだが。刑務官に反論する受刑者はそういないと思われる。反論に慣れていないので説明が下手なのだろう。
データについていえば、死刑制度の存廃の調査(http://survey.gov-online.go.jp/h26/h26-houseido/zh/z02.html)について、死刑廃止派の本村健太郎弁護士が死刑存続賛成派の内訳をあれこれ述べた後、坂本元刑務官は
「それ、全回答数なんぼあるか知ってます?(略)千五六百しかないしょ、ね」
と本村弁護士の弁論を(その場としては)粉砕してしまった。だが、坂本元刑務官が持つ統計への不信感をさらけ出しているだけだ。
全回答数は1826人でこれは全国民を対象とする調査のサンプル数として、偏りがなければ、十分なのだ。